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千葉地方裁判所 昭和44年(リ)3号 決定 1969年7月03日

申立人 安文植

右代理人弁護士 竹原茂雄

主文

本件申立を却下する。

理由

一件記録によると、千葉地方裁判所佐倉支部は昭和四四年(ル)第一六号(ヲ)第一六号事件として申立外債務者紺野ハルの申立外第三債務者千葉県に対して有する千葉県が行う公有水面埋立に伴う右ハルの納涼台の営業廃止に伴う損失補償債権(以下単に補償金という。)金一一、四一二、〇〇〇円につき、昭和四四年五月一二日申立外債権者千葉三菱自動車販売株式会社のため債権差押、取立命令を発し、その後千葉地方裁判所は昭和四四年(ル)第二一七号(ヲ)第二四六号事件として右補償金につき、同月一五日申立外債権者大野秀晴のため、同裁判所昭和四四年(ル)第二四〇号(ヲ)第二七一号事件として同月二四日申立外債権者吉本幸義のため、同裁判所昭和四四年(ル)第二四一号(ヲ)第二七三号事件として同月二六日申立外債権者相沢昭一のためそれぞれ債権差押、転付命令を発し、右各命令は同月二七日までに千葉県に送達されたので、同年六月四日千葉県は右補償金を供託し、同日右事情を千葉地方裁判所に届出たことが認められる。(なお本件記録中には、昭和四四年六月四日付の債務額供託事情届とは別の昭和四四年六月二六日付の債務額供託事情届が存在し、後者の事情届には、前者の事情届は昭和四四年六月五日が支払期日である補償金の一部たる金五、七〇六、〇〇〇円についての供託事情届のみであって、弁済期が同年六月三〇日である残余の補償金五、七〇六、〇〇〇円についての供託事情届は同年六月二六日付の後者の供託事情届においてなす旨の記載があるが、前者の供託事情届および納付書によれば弁済期が六月三〇日の分を含め補償金全額につき供託事情届をなしたことが明らかである。)

ところで、金銭債権に対し、重複して差押がなされた場合には、差押債権者としては第三債務者に対し供託の請求をなしうるにすぎず、第三債務者が任意に供託し、その旨を裁判所に届出た場合には、すでに換価手続は終了して配当財団は確定したものというべく、それ以後は配当手続に移るのであるから、右供託事情届出後の配当要求は許されないと考えるのが相当であり、この理は、第三債務者がいまだ期限の到来していない債務につき任意に供託したときにも(この場合は、第三債務者が期限の利益を放棄したと認められる。)異ならない。

本件配当要求は、昭和四四年六月四日の供託事情届以後になされたことが明らかであるから、以上に述べた理由により不適法として却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 勝又護郎)

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